遺伝子実験施設セミナーご案内
 1月14日に理化学研究所脳科学総合研究センター水野秀昭先生をお招きして、セミナーを開催いたします。水野先生は、宮脇敦史先生の研究室で新規蛍光タンパク質やGFP改変タンパク質の同定、作成に携わり、細胞活動のイメージングにおいて多くの成果を上げておられます。今回は最新の成果である新規蛍光タンパク質Kaede、Dronpa を用いたイメージングについて分かり易く説明していただく予定です。教官、大学院生、その他の方々のご参加をお待ちしております。

演題名:光を用いた蛍光タンパク質の制御
演者:理化学研究所脳科学総合研究センター 水野秀昭博士
日時:平成17年1月14日(金曜日) 15:00-16:00
場所:遺伝子実験施設3階カンファレンス室
問い合わせ先:遺伝子実験施設 秋 利彦 (内線2184)


光を用いた蛍光タンパク質の制御
理研・脳センター  水野 秀昭
 オワンクラゲより抽出された緑色蛍光タンパク質 (GFP) は、自身のアミノ酸残基をもとに自己触媒的に発色団を形成する。タンパク質の発見は 1960 年代にさかのぼるが、このタンパク質が分子生物学的な道具として注目を浴びるようになったのは、 1990 年代前半にこのタンパク質がクローニングされ、大腸菌、線虫、哺乳細胞等に発現させるだけで蛍光を発する事が証明されたことがきっかけである。その後GFP への変異の導入や、サンゴ等から GFP 類似タンパク質がクローニングされ、今では様々な色や特徴を持つ蛍光タンパク質が報告されている。最近、光を利用し、蛍光の on/off や蛍光色をコントロール出来る蛍光タンパク質がいくつか報告された。この特徴を活かすと、細胞のマーキングや細胞内のタンパク質輸送の解析等に蛍光タンパク質を利用する事が出来る。私達の研究室でもこのような性質を持つ二つの蛍光タンパク質が開発され、 Kaede, Dronpa と名付けられている。Kaede は緑色の蛍光を発するタンパク質であるが、紫外光を照射すると蛍光色が不可逆的に赤色に変化する。例えば神経細胞にKaedeを発現させ、一つの細胞をねらって紫外光を照射すると、複雑に絡み合っている神経突起のうち、ねらった細胞から伸びた突起だけを赤色に浮かび上がらせる事が出来る。Dronpa も緑色の蛍光タンパク質であるが、 青緑色の光を照射すると無蛍光になり、その後紫外光を照射すると蛍光が復活する。この過程は完全に可逆的であり、何百回と繰り返す事が可能である。もともと GFP は平衡状態でのタンパク質の分布を見るのは得意だが、その動きを追いかけるのは苦手である。Dronpa を用いると、蛍光の on/off を利用する事によって細胞内でのタンパク質の動きを観察する事ができる。また、同じ細胞で繰り返せるため、例えばアゴニスト刺激後のタンパク質の輸送速度が経時的にどのように変化するかを解析することが可能となる。本セミナーではこの二つの蛍光タンパク質を中心に、その原理と利用法について紹介する。